太陽が登らなかった朝

 光男君は目がさめました。上半身を起こしてあたりを見てみました。部屋の中は真夜中のように真っ暗でした。もうひと寝入りしようと思って、光男くんは布団に潜り込みました。けれど毎朝目がさめたときのように、光男君はすっきりと目がさめてしまって、もう眠くはありませんでした。

 しばらくの間、光男君は布団の中でぐすぐすしていました。けれど退屈でつまらないので、光男君は手を伸ばして目覚し時計を見てみました。夜行塗料の文字盤がうっすらと読めました。

「七時?うっそう。そんなはずはないよ。こんなに真っ暗なんだから。この目覚し、壊れている。」

光男君は布団から出て、部屋の明りをつけました。壁にかった大きな時計も七時を指していました。

「こりゃあ変だぞ。どうしたんだろう。ともかく学校へ行く準備をしなちゃあ。」

光男君は大急ぎで服を着換えると、窓を開けて外を覗きました。空には星がきれいに輝き、道路には街灯がともっていました。光男君は首をひねりながら、食堂に行ってみました。

 食堂ではお父さんがいつものようにゆうゆうと、テレビを見ながら朝食をとっていました。

「おはよう、父さん。今日はどうしてこんなに暗いの?外はまだ夜だよ。」

「光男か。おはよう。よく起きれたね。そうなんだよ。父さんもびっくりしているんだ。」「じゃあやっぱり、今、七時なの。」

「そうなんだよ。今、朝七時のニュースが終わったところなんだよ。」

「へー、いつもならこの時間はもう、明るいはずなのにね。空が曇っているわけでもないのに、なぜこんなに暗いのかなあ。」

「今、ニュースで言っていたけど、今日は御日様が昇のを忘れたんだってさ。きっと寝坊してしまったんだろう。御日様が昇のを忘れてしまったので、ついでに今日は仕事を、空に昇のを休むんだとさ。」

「へえ、御日様も空に昇のを休むことがあるの。」

僕は不思議に思って、お父さんに聞き返しました。

「ううん。今まで何万年もきちんと仕事をしていたのだから、たまには御日様も仕事を休んだっていいだろう。」

と、お父さんは当り前だと言うような顔をして答えました。

 僕は暗いところがあまり好きではありません。急に暗い中を学校へ行く自分の姿を想像してしまいました。そこで光男君は少し声を落として言いました。

「こんな暗い中を学校へ行くのは恐いなあ。懐中電灯を持っていこうかな。」

「うん、うん。子どもには危険だよね。今日は学校は臨時休校だとの、放送があったから。今日は学校は休みだ。」

僕はそれを聞いてほっとしました。

 僕は僕がいつも言われていることW思い出しました。

「御日様が仕事を休むとみんなに迷惑がかかるよね。」

「ああ、そうだね。昼間に御日様が無いと、みんなが迷惑するね。」

「御日様は、誰かに叱られるの?」

お父さんは、困ったと言う顔をして、黙ってしまいました。

 僕は朝ご飯を食べながら、御日様が空に昇のを忘れることも悪くはないなと思いました。

 

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