太陽とひまわり    須藤 透留

 

 真夏は太陽の一番忙しい時期です。朝早くから空に掛け登り、夕方遅くまで空に残って、精いっぱい地表を照らさなければなりません。太陽が一生懸命地表を照らせば、草木や動物は、みんな元気で、生き生きしました。ですからいくら忙しくても、太陽はこの仕事が大好きでした。この様に地上の全ての物から喜ばれていた太陽でしたが、その太陽にも一つだけ嫌なことがありました。それはひまわりの花についてのことでした。

 真夏になるとひまわりは大きな、太陽そっくりの花を咲かせます。太陽が空で一生懸命輝いていると、ひまわりはそのひときわ高いその背をぴんと伸ばして、その大きな花を太陽の方に向けて、太陽からのエネルギーをいっぱい吸い込んでしまいます。ひまわりが余りにたくさんのエネルギーを吸収するので、太陽はひまわりのことを疑っていたのでした。太陽は、自分が空に出ていない曇った日や夜に、ひまわりが太陽の真似をして、空に登ってエネルギーを放出し、地上を照らしているのではないかと疑っていたのでした。

毎日毎日、ひまわりの姿を見る度に、太陽はひまわりを疑いの目でみていました。そしてついにその疑いがこうじて、太陽はひまわりのことを憎らしく思うようになりました。

 その日も太陽は朝早くから空に登って、地上を照らしていました。太陽が地上を照らし始めるとひろい野原に咲いていたひまわりがその大きな、太陽にそっくりの花を太陽に向けて、太陽からのエネルギーをたくさん吸収し始めました。太陽はひまわりに向かって言いました。

「おーい、ひまわり君。君はどうして僕の真似ばかりすんだい。」

「やあ、お日様さん。ご苦労様。お陰様で、僕はこんなに大きくなれました。みんなお日様のお陰ですよ。」

ひまわりはお日様の言った意味が解りませんでしたから、とんちんかんな答えを返してきました。

 お日様は仕事を終えて、西の空から降りると、急いで神様の所に行って、神様にひまわりのことを言いました。

「だって、神様。ひまわりは姿形まで私そっくりの真似をして、私の居ない時には空に登って、私の真似をして、地上を照らしているのですよ。にくたらしいじゃあ、ありませんか?」

 しかし神様は

「は、は、は、は。そりゃあ、君のはやとちりだよ。そんな心配はいらないから、早く帰って休みたまえ。」

といって、取り合ってくれませんでした。

 そこで太陽は、流れ星を捕まえて言いました。

「ねえ、流れ星君。ちょっと野原に行って、ひまわり君が何をしているか見てきてくれないか?」

と頼みました。流れ星は

「ああ、いいよ。」

と心安く返事をして、野原へ飛んで行きました。流れ星が帰ってくるまで、太陽は落ち着きがなく、そのあたりをうろうろしていました。

 間もなくして、流れ星が帰ってきて、太陽に向かって言いました。

「ひまわり君は頭を垂らして、寝言を言って、寝ていたよ。」

「え、本当?何だ、ひまわり君は眠たがりなんだなあ。」

太陽は言葉でごまかしました。本当はひまわりが空に登って、地上を照らしていないと知って、ほっとしたのでした。

 太陽はそれだけでは、まだ納得できませんでした。曇りの日には、ひまわりはきっと空に登って那覇らを照らしているのではないかと考えました。そこで雲の上まで飛び上がった鷹を捕まえて言いました。

「鷹君、雲の下の野原に行って、ひまわり君が何をしているか見てきてくれないか?」

鷹は

「お安い御用で。」

と言って、雲を突き抜けて、野原に降りてみました。そこではひまわりは空を見上げてお日様が出てくるのを待っていました。鷹はひまわりの様子を見届けると、また飛び上がり、雲を突き抜けて、お日様の所にやってきました。

「ひまわり君はは空を見上げて、あなたを捜していましたよ。早く雲をとっぱらって、顔を出してあげたらいかがです?」

鷹は言いました。太陽は

「僕を捜していたって?そう、ありがとう。じゃあ、がんばって、雲を取り除こうか。早くひまわり君に会いたいからね。」

と言うと、鼻歌混じりに、雲を取り除き始めました。

 しばらくすると太陽が大空に顔を出しました。

「やあ、ひまわり君。お待ちどうさま。さあさあ、いっぱい輝くから、たんとエネルギーを吸い取って下さいな。」

「お日様さん。待ってましたよ。久しぶりですね。貴方がいないと、僕は僕の仕事ができないんです。本当に、お待ちしていました。」そう言うと、ひまわりはその大きな花を太陽の方に向けて、太陽からの光をいっぱい吸収し始めました。

 それから後は、太陽とひまわりが顔を合わすと、いろいろな世も山話をして、楽しく過ごしました。

 

 

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